お絵かき。幼い頃は私も含めて誰もが大好きだった遊びですね。
みんな楽しそうにクレヨンを握り、時間を忘れるほど夢中になって思うがままに自由な線を描きます。ところが、だんだん年を重ねるにつれ「うまい、下手」という曖昧で不明瞭な基準で判断されるようになり、多くの人は、ある日突然「描くことが嫌だ!」と絵を描くことを拒絶するようになってしまうようです。
しかし、優れた絵が描けなくとも審美眼というセンスがある画商たちは、多くの優れた画家を育て上げます。歌が上手くない著名な作曲家や演奏者もいるように、音楽のセンスがある者が美声の持ち主とは限らないのと同じです。足が遅いダンサーもいれば、運動が苦手でも、体を使うセンスに優れた人はいくらでもいます。
アップルのスティーブ・ジョブズが、スマホやコンピュータを単なる技術だけでなく、卓越した美意識とセンスのもとで製品に仕上げ、多くの人に支持される爆発的なヒット商品を生み出したことで、独自の美意識とセンスが企業や個人の価値となり、成長を促すということを証明しました。
高度成長期には「質より量」、成長期後半からしばらくは「質の安全性」が求められていた日本のモノづくりですが、今は、美意識やセンスの良し悪しが、企業や個人の存続に関わる時代のようです。
絵やイラストを描くことが苦手な私でも、知識や経験の集積である「センス」のクオリティを上げることで、アウトプットの精度を上げ、最適なビジュアルを作り出すことが可能になるのだ――。
2017年に向けての心強い確信と希望を、水野学『センスは知識からはじまる』から感じ取ることができました。
参考文献:
水野 学(2014)『センスは知識からはじまる』 朝日新聞出版.